長いハンデ – Osterley Bag by NAMACHEKO

Mon.05.25.2026

 

今しがた誰もが願った「サレットの男が立ち止まる」という行為を遂に、当の男が取り行ったのに従って私たちは、揃いも揃って常套の固唾を飲み込んだ始末である。
あとはサレットを外し、バッグにそれを入れようとしてみてくれさえすれば、こちらの最後の溜飲が下がる。

 

彼を追いかけていた男児がさっき、「被り物(サレット)は中が空洞だからお弁当箱が収まるし、バッグは広いマチが及んで被り物をすっぽりと収める」といっていた。
さっきは一目見るになんの変哲もない小学校中学年程度の男児の、大人びた、それでいて風変わりな言辞に気を取られていたものの、その言葉が本件にあっては他に類をみない重大なタレコミとなったことは表明に値するだろう。

 

隣で息を切らしていた別の男児がこう続ける。
「330× 200×300(mm)だから何でも入るのにね、甲冑なんて、かぶってもいいけどバッグん中入れなきゃいいのに。入るのはわかったけど蓋しちゃわないでよ。つって。」

 

やはり、彼らのしっぽとりには他意がある。
そう私が確信するや否や、またその男は歩き出した。
三機を意味する三本のしっぽがまた、ひらひらし始めた。

 

三本のしっぽのうち一本だけ、画一的な質を持つものがある。
それはバッグから伸びた一本で、いくつもの穴が開いたレザーという内訳。
マリナイーのデニムから伸びたしっぽの軽快な舞との間に展開されたショルダーストラップの重大な振れは指数関数的に量(遅延)を獲得してゆく。
いずれにせよ、耐え難く感じられたことはここにも起因するだろう。
こんなにもゆっくり揺れているものを捕まえられないことのもどかしさに…。

男がつまずいた。
それは珍しいことでも何でもなく、さっきから男は転んだり止まったり、座ったりしている。少なくとも、求めていないのに施されるハンデほど耐え難いものなどない。

 

この度のつまずきは高強度のゴールテープに上体が堰き止められたようにも見えたのをとりあえずつまずいたこととしたのであるが実際、それは正確な見立てとはいえない。
普段よりお弁当箱ひとつ分軽いはずのバッグが葉桜のところまで打ち上がることは「転倒」によって導かれ得ないからだ。

 

結果としてバッグは私のところに自由落下してきた。
目に入ったバッグの内側に戦慄いていたら、サレットの男が私に話しかけてきた。

サレット男「ごめんなさ〜い!」

「お気になさらず、

 

中にワンちゃんいらっしゃったのですね、

 

大丈夫かなあ?、

 

お弁当箱置いていかれてたみたいですよ、

 

あれ?小学生くらいの、ええ、二人くらいいて、もうひとりは口達者の…、」

 

暫く動揺を隠せずにいるとサレットの男は慣れない手つきで、そのショルダーストラップを最長まで伸ばしはじめた。
経験から判断するならこの行為はおいおい重大になってくるな、と思った。

バッグを肩にかけて私に手を振り、彼はまたどこかに走って行った。
あと2回、私は彼を捕まえなければならない。

 

 

“Namacheko”   –  OSTERLEY BAG (Large) –
¥214,500- (tax included)