Ear Discoveries: “Ahmad Jamal”

Fri.10.09.2026

 

 

 

 

こんにちは。禅野です。
ここ数日、急に秋めいてきましたね。
僕は秋になると、無性にAhmad Jamalが聴きたくなる。
ECMのような知的でクールな作品を、家でじっくり聴きたくなる季節でもありますが、秋の夜に街を歩くときは、彼のピアノが欲しくなるんです。
僕にとっては、秋の夜のお散歩ソング。
2023年に92歳で亡くなったので、もう3年前になるんですね。

 

Ahmad Jamalといえば、まず思い浮かぶのがこちら。

 

 

 

Ahmad Jamal Trio – The Awakening
JAZZに少しでも興味がある方はもちろん、HIP HOPがお好きな方にもサンプリングネタとして有名な一枚。ジャケットを見たことがある、という方も少なくないのではないでしょうか。

 

このアルバムも好きです。

 

Ahmad Jamal – Tranquility

 

 

Ahmad Jamalの演奏を聴いていると、音数が多いわけではないのに、妙に耳に残る。
Miles DavisはAhmad Jamalについて、
“Listen to the way Jamal uses space. He lets it go so that you can feel the rhythm section and the rhythm section can feel you. It’s not crowded.”
と語っています。
Jamalが空間をどう使っているか聴いてみてほしい。音を詰め込まずに余白を残すことで、リズムセクションを感じることができるし、リズムセクションも自分の演奏を感じることができる。窮屈じゃない。
というような意味でしょうか。
確かに、Ahmad Jamalを聴いていると、音と音の間にちゃんと空間があるように感じます。

 

 

 

 

そして、Ahmad Jamalを聴くといつも思い出す、NYでの思い出。
中台さんとNYへ古着の買い付けに行った時、一日中、買い付けたたくさんの洋服を両手に抱えて、NYの街を歩き回っていました。
肉体的な疲労はもちろん、どうにもならない渋滞でとりあえずクラクションを鳴らす不届きものや、エネルギッシュなニューヨーカーのマシンガンイングリッシュトークに、耳も疲れていました。
なので、Brooklynにとっていた宿では、基本的に日本人ミュージシャンのアコースティックな音楽を聴いて、癒されていました。天邪鬼ですね~。

 

 

帰国前最後の夜、梱包用の段ボールが足りなくなって、夜遅くにひとりでホームセンターへ自転車でおつかいに行くことに。
日中、両肩に抱えていた大きな荷物もない。
どんなトラブルが起きようと微動だにしない心強い中台さんもいない。

 

夜です。
手ぶらです。
ひとりです。

 

ちょっと不安もありましたが、なんだかワクワクしました。
「速っ!」と思って眺めていた、アメリカのレンタルサイクルにようやく乗れるのも楽しみ。
部屋を出る前に中台さんに「ついに夜のNYをクルージングできますね。浅川マキとか聴いたら気持ちよさそうですね〜」と言ったら、「海外で聴く日本の曲も特別よく聴こえるけど、やっぱりその場所で生まれた音楽を聴くのもいいよ」教えてもらったので、「確かに!じゃあ、Ahmad Jamalですね!」と即答し、NYのLIVEアルバムを再生し、自転車を走らせました。
JAY-Zが幼少期を過ごしたBrooklynの団地、MARCY HOUSESの側を通るとき少しスピードを上げたのもいい思い出。
忘れられないアルバムですね。

 

 

Ahmad Jamal – Blue Moon – The New York Session
ニューヨークのAvatar Studiosで録音された、2012年発表の作品。
Ahmad Jamalのピアノに、Reginald Vealのベース、Herlin Rileyのドラム、Manolo Badrenaのパーカッション。
驚くことに録音時、Jamalが80歳超え、衰え知らずですね…。

 

 

街は相変わらず騒がしいのに、ヘッドホンの中ではAhmad Jamalの音が、妙にすっきりと聴こえる。
音が詰まっていない。
それぞれの音の間に、ちゃんと空間がある。
あの夜、自転車で走りながら聴いたAhmad Jamalのことは、今でもよく覚えています。
NYという街には、いつまでも慣れたくない。
何度行っても、初めて来たみたいに高揚していたい。
そして今年も、秋の始まりにAhmad Jamalを聴いています。